先日のセイコーゴールデングランプリで、リオ五輪銀メダルのリレーチームが、米国・中国を破って優勝しました。ひと昔前までは、日本の短距離選手が米国に勝つなんて、マンガの世界の話。ここ数年で、陸上100メートルに速い選手が増えてきました。
そう言えば陸上短距離だけでなく、卓球やバドミントンでも日本選手の世界的活躍が目立つようになってきました。それも傑出した一人の選手ではなく、世界レベルの選手が次から次へと湧くように出てきている。
少子化で減少する若年人口。
普通に考えれば「競技人口減→レベルダウン」という流れになるはず。
ところが、実際には逆に世界レベルの選手が続々と出てきている種目があります。
そもそも若年層の競技人口は減少しているのか?
高校生の競技人口の推移を例として調べてみました。
1.少子化の影響で高校生世代の競技人口は減っている?
出典は全国高等学校体育連盟(高体連)の種目別の加盟人数。まあ平たく言えば、部活動に加盟している高校生の人数です。硬式野球部やサッカーのJユースチーム等、一部含まれていないものはありますが、全体の傾向を把握するには支障はないと思います。
時期はどこまで遡るかという問題がありますが、とりあえず平成15年と28年を比較してみました。種目別の傾向も見るため、競技人口が多い上位8競技(便宜的に人気8競技と呼びます)の推移も併せて、表示しました。
*人気8競技:サッカー、バスケット、テニス、陸上、バレー、卓球、バドミントン、ソフトテニス
2.全体として高校生の運動部への参加割合は増えているが、マイナー競技は減っている
加盟者数全体を見ると、意外にも横ばい(H15年126万人→H28年126万人)で、減っていないんですね。この間の18歳人口は150万人から119万人と30万以上減っているので、部活に入る高校生の割合は逆に増えています。
男女別に見ると、女子は減少傾向ですが、男子がH25年から増加しています。男子の増加が、部活人口の減少を食い止めているようです。
ただ、マイナー種目(人気8競技以外)の関係者にとって悩ましいことがあります。
部活動全体の参加人員は変わらないにもかかわらず、マイナー競技の人口は減少しています。
というのも、人気8競技の占有率が少しずつですが上昇しているのです(H15年61%→H28年65%)。人気8競技の占有率が上昇していると言うことは、それ以外の競技の人口が減少していることになります。
人気種目への偏重が進んでいるようです。
*マイナー競技の競技人口の推移は下記で書いてます。
次に、人気8種目についても見てみると、「競技人口の増減」という観点からは、明暗がくっきりと分かれました。
(1) 競技人口が増加している種目
増えたのは以下の4種目。
・バドミントン 134%
・サッカー 121%
・陸上 118%
・卓球 106%
中でも目立つのがバドミントンの増加。
特に男子の競技人口が異様なまでに増加。なんとこの期間で1.9倍!。28年には男子の競技人口が女子を上回るまでになりました。
年度別に見てもある年だけ急激に増えているのではなく、毎年着実に増加しています。人気トップのサッカーも増えていますが、増加率・増加数ともにそれを凌駕してます。
この増加要因は何なのか?
これが分かると、競技人口減少に悩む種目の関係者には参考になるんじゃないでしょうか。
サッカーは男子の増加に加えて、女子の統計も始まったため、全体で20%超の増加。
陸上競技は、要因は分かりませんが、毎年着実に増えています。
サッカーと陸上の2競技は、多くの競技で減少している女子が増えており、男女合計でも20%程度の増加となっています。
卓球は若干の増加ですが、ここも女子が10%超の増加となっています。
(2)競技人口が減少している種目
減っているのは減少が大きい順に以下の通り。
・テニス 89%
・バレー 90%
・ソフトテニス 93%
・バスケット 98%
テニスは、H15年というとアニメの「テニスの王子様」の影響があったころで、比較の基準が高すぎるのかもしれません。H20年以降だけを見ると、横這い・増加しているので、比較した時期が悪かったか?
一番深刻なのがバレー。
H28年で若干持ち直したものの、減少幅が大きい。特に女子はこの期間で87%と、8競技の中で最大の減少。H28年の持ち直しが今後も続けば良いのですが、、、。
意外なのがバスケット。
H29年のBリーグの発足等で盛り上がっているかと思っていたのですが、ついこの間までの協会のごたごた等のせいか、「男子横ばい・女子減少」となってます。ただ、H28年だけを見ると競技人口は増加に転じており、今後の推移を見守る必要はありそうです。
3.まとめ
少子化にもかかわらず、競技人口が増えている種目もありました。
競技人口の上位8種目のうち、4種目で競技人口が増えているのは意外な発見です。
同じ期間に、18才人口が79%(150万人⇒119万人)と減少していることを鑑みると、増加している事自体が驚きです。
競技人口の増加と競技レベル向上の相関関係は、はっきりとは分かりませんが、レベルアップした種目はいずれも競技人口増えているのは興味深い。
競技人口が増加した4競技は、ここ数年国際大会での活躍が目立つ種目です。
バドミントン・陸上・卓球は冒頭にも書いたとおりですが、サッカーも一時の勢いほどでは無いにしろ、90年以降のレベルアップは周知の通り。
「競技人口の増加⇒レベルアップ⇒さらなる競技人口の増加」という好循環に入ったのなら、喜ばしいところ。
一方、競技人口が減っている種目は、国際舞台で今一歩奮いません。
バレー・バスケットは世界大会でのメダル争いどころか、下手すれば五輪の出場権さえ逃すことも。テニスは錦織選手の活躍はあるものの、それに続く選手が見当たらないという状況。
どの競技も近年、国際舞台で目立つ成績が挙げられずに苦しんでいる印象があります。
一方、マイナースポーツの競技人口減少は防ぎようがないのか?
学校単位で見た場合、生徒数が減ると部員が少ないマイナースポーツから先に廃部になってしまうのは致し方ないでしょう。部がなくなれば、これまでマイナースポーツの部に入っていた生徒が、他の種目を選んでしまう事もある。
そうだとすると少子化が進む中で、人気種目の寡占化が進むのは避けられない。
学校単位の部活動、特にマイナースポーツの活動方法は転換期に来ているのかもしれない。
それにしても、バドミントンの大幅な増加は凄い!
とても気になります。
競技人口減少に悩んでいる競技の関係者は、ノウハウを知りたいんじゃないでしょうか。