【書評】日本の医療は世界一。ただし、医療費の国民負担と医師の労働時間も世界一。「日本の医療をくらべてみたら10勝5敗3分けで世界一」

ためになりました。

本を読むというのは、タイミングも重要なんですね。

改めて実感しました。

 

東京医大の入試不正問題で、医師の職場環境の過酷さが話題になる中、こういうブログを書きました。 病院関連の仕事をしたときの経験に基づいて書いたブログです。

bird2010.hatenadiary.com

 このブログを書いたすぐ後、本屋で日本と海外の医療環境の比較をしている本書を見つけました。読んで見ると、ブログの内容を検証することができるとともに、医療の仕組みを網羅的に理解することができました。

とても有意義な本でした。読んで良かったです。

 

本書の特徴は、豊富なデータもさることながら、加えて著者の取材によって得た医療現場の生の姿も伝えていること。著者の経験や見聞を補完することで、データだけでは見落としがちな現場の実態を、浮き彫りにしています。

客観的な記述と取材による記述のバランスをとろうとする、真摯な姿勢には好感が持てます。

 

筆者によると、日本の医療レベルは世界一だそうです。  

一方、問題なのは「医療費の高さ」と「医師の労働時間」も世界トップクラスなこと。

 

医師・看護師の医療レベルの高さと医療費の高さ・医師の過重労働。これらに支えられて、日本の患者は世界で最も充実した診察を受ける事が出来ているのです。

 

 

1.日本と海外主要国との医療体制の比較表

この本では、以下の6項目で日本と主要国との医療体制の比較を行っています。

  ・医療レベル

  ・医療の身近さ

  ・薬への依存度

  ・医療費

  ・病院

  ・高齢化対策

 

結果は以下の通り 

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本の題名通り、日本が10勝5敗3分け。

特に、患者からみた医療サービスの高さは総じて高い得点を獲得してます。

サービスが良い反面、その分高コスト体質になっていて、過剰投薬にも繋がっているよう。

ただ、全体的に、日本の医療体制は世界でもトップレベルにあるようで、筆者はこの結果を根拠に、日本の医療は世界一だと主張しています。

特徴的な箇所を抜き出してみます。

2.日本の良いところ

・医療レベルが均質で幅広い人々が受診出来る

日本では、国民皆保険が徹底していることが大きなメリットになっています。自己負担の3割があるものの、比較的安い料金でいつでも診療を受けることが出来ます。

海外では、自己負担が高い(米国、中国)、なかなか治療を受けることが出来ない(独、北欧)といった問題があるようです。

人数当たりの病院の数も多く、多くの街に大なり小なり病院が必ずあるのは、患者にとってはありがたいこと。医師へのアクセスのしやすさが際立っています。

 

また、最先端医療の分野を除けば、日本の医師の技術は世界トップクラスとの評価を得ているようです。

ビジネスライクな海外の看護師に比べると、日本の看護師のホスピタリティは外国人の賞賛の的になっています。

 

安価な費用で、レベルの高い治療を、全国くまなく受けられる仕組みが日本にはあります。

 

・高齢化対策が進んでいる

国内では批判もある介護保険ですが、世界的に見ると日本が一番機能しています

同じように介護保険を導入している北欧や独と比較すると、適用範囲が広く給付も寛大で、かつサービスも充実。

終末期にならないと支援を受けられない北欧に比べると、保険を活用する人も多く、高齢者支援は進んでいます。

 

3.日本の課題

・急速に増える医療費負担

医療費のGDP比は2016年で11.2%で、OECD諸国では3番目の高さ。アメリカの16.9%よりは少ないが、多い方であることは間違いない。 

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問題は、医療費が急増すること。世界最先端で高齢化が進むため、医療費の伸びはすさまじい。現在40兆程度の医療費が、2025年には54兆になると見込まれています。これは今の税収とほぼ同額。

医療比の膨張を抑えることが、緊急の課題になっています。

 

・世界一長い医師関係者の労働時間

 日本医師会によると、産婦人科の勤務時間は日本が一番長い。

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産婦人科のデータしか載っていなかったため、医師全体のデータは不明です。しかし、著書の各国での経験からすると、日本の医師の勤務時間は飛び抜けて長いようです。

これは医師の数が少ないことに起因しているとのこと。

(ここの箇所は、もう少しデータが欲しかった、、、)

 

4.まとめ

この本を手に取ったのは、東京医大関連のブログを書いた直後でした。

 

ブログに書いたことは、あくまでも自分が経験した範囲のことなので、どこまで一般化出来るのか一抹の不安があったことは確か(医療業界の大まかな状況は把握していましたが、きちんとした形で業界全体の調査をしたわけではなかった。)。

 

この本には、医療費が高いこと、医師が少ないこと、病院経営が苦しいことなど、ブログで言及した内容が客観的なデータで示されていて安心しました。

また、高齢化対策が進んでいることなどは、この本で初めて知りました。そういう側面があることを知ることが出来たのは収穫です。

 

*最後に 

しみじみ思ったのですが、ブログを書いた後に本を読むと、普段よりすらすらと頭に入ってきますね。理解が深まります。

 

アウトプットとインプット。

「ブログ書く」+「関連書籍を読む」は、セットでやっておくべきですなあ。

 

 

*他でも、こんな記事を見つけました。国際的な医療専門誌でも、日本の医療体制への評価は高いようです。


www.huffingtonpost.jp

 

 

日本の医療、くらべてみたら10勝5敗3分けで世界一 (講談社+α新書)

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