小学校の硬式野球に始まり、中高大と部活を含め様々な競技をやってきました。
この本を読んで、僕がこれまで経験したスポーツとはなんだったのか。
考えさせられました。
日本のスポーツ界がいかに子供をスポイルして、可能性の芽を摘んでいるのか。イタリアのサッカーチームの現状をレポートすることで、そのことを浮き彫りにします。
イタリアのような国で少年時代を過ごせば、今よりもっとスポーツを好きになれただろう。そう思わせる本です。
イタリアのサッカー事情を書いていますが、日伊のスポーツに対する考え方の違いも分かります。サッカーに限らず、全てのスポーツ指導者に読んで頂きたい内容です。
著者は、サッカー好きが高じてイタリアへ移住してしまった記者兼スカウト。
イタリアでサッカー専門誌の記者を経験するなど、20年におよぶ駐伊のキャリアを持っています。
本書では、自身の長男が所属する街の典型的なサッカーチームの様子を交えながら、イタリアと日本のサッカー事情の違いを述べています。
「人生には勝敗より大切なものがある」。イタリア人の根底にある理念です。
だから、彼らは子供達にハードトレーニングを課すことがない。出来なくても、暴言を吐いたり、ましてや暴力によって強制的にやらせることはない。
日本では練習はとかく、辛く厳しいものだと考えられています。辛い練習に耐えることで、強くなれるという風潮がまだまだ根強い。
しかし本書を読むと、上手くなるには辛い練習は却ってマイナスになるように思えます。
楽しんでやること。これが上手くなるために大切なことだと、気づかされます。
イタリアの少年達にとって、サッカーの練習を楽しいもの。
トレーニングメニューは遊び心満載で、常に楽しむ要素が織り込まれている。練習中にはいつも笑いがあり、指導者の怒り声や罵声は皆無だといいます。
練習が中止になると、日本では多くの生徒は喜ぶが、イタリアの少年からは不平が出る。彼らにとって、練習は楽しいものなのだ。選手と監督が対等の立場にたって、ともにトレーニングする姿はうらやましい。
毎回のトレーニングが楽しいから、前向きに取り組む。前向きに取り組むから、ぐんぐん上手くなる。トレーニングがそういった好循環で回っている。そこには、悲壮感や耐える・我慢、という要素はみじんも見られない。
練習量もとても少ない。
本書に出てくる中学生世代のサッカーチームのスケジュールを見ると、先日スポーツ庁が出した部活動のガイドラインでさえ、練習過多に思える。
イタリア スポーツ庁
練習日数/週 3〜4日 5日以内
練習時間 90分以内 2時間程度
シーズオフ 3ヶ月 ある程度の休養
年間の練習時間を計算してみると、スポーツ庁のガイドラインでさえ、イタリアの中学生の倍以上になります。ところが、このガイドラインでさえ超えてしまう、という学校が多くあるという。日本人はどれだけ練習したら気が済むの?
加えてイタリアには、朝練・居残り練習、試合後の罰則走、指導者からの暴言も皆無。
日本とは全く真逆のような考え方は、なぜ出来たのか。
それは、「スポーツはあくまで遊び」だという理念を、国民全員が共有していることにある。
スポーツとは選手が自主的にやるものであり、大人や指導者がやらせるものではない。
選手自身が楽しんでいるかどうかが重要だ、という考えが浸透している。
彼らも、スポーツには真剣に取り組んでいる。しかし、「楽しむ」というスポーツの基本は常に忘れていません。勝敗だけに一喜一憂しないイタリア人の懐の深さ。
日本の部活動で辛い体験をしてきた僕から見ると、このような環境こそが、スポーツ本来の姿であるように思える。
最後に勝つのは苦しんだ奴ではなく、楽しんだ奴。
イタリアのサッカー界が日本のスポーツ指導者に送るメッセージが、この本には詰まっています。
カルチョの休日 イタリアのサッカー少年は蹴球3日でグングン伸びる
- 作者: 宮崎隆司,熊崎敬
- 出版社/メーカー: 内外出版社
- 発売日: 2018/07/31
- メディア: 単行本
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