ビートルズの名曲「オブラディ・オブラダ」を聞いて、ポール・マッカートニーの凄さに震撼

いやあ、今更こんなこと言うと怒られますが、ポール・マッカトニーという人の凄さを思い知らされました。
まさに、ポップミュージックの申し子ですな。

久しぶりに、「オブラディ・オブラダ」を聞く機会がありました。
何ということもない曲なのですが、なぜか何度も繰り返してしまい、最後には感動して涙が出てしまいました。


この曲の何が凄いのか?

「テーマ」がまったくない。


普通、曲には「テーマ」がありますよね。
恋愛とか、人生の悩みとか、プロテストソングとか。

もちろん、ビートルズの曲の多くにも「テーマ」があります。
「ヘイ・ジュード」で悩む人を勇気づけたり、
「レット・イット・ビー」では「思うままに生きよ」とメッセージを投げかけたり。


でも「オブラディ・オブラダ」には、これといったテーマがありません。
「若い二人が出会って恋に落ちて、結婚して、子供が生まれて、幸せに暮らしました。めでたしめでたし」で終わり。

感情の起伏も、盛り上がりもありません。
淡々と日常の生活を描くだけ。
まるで、小学生の作文みたいな内容です。

日常生活を切り取っただけの曲なんだけど、幸せそうな家族の姿が自然と浮かんできます。
聞いているうちに、こちらまで幸せな気分になってくる不思議な曲です。

*歌詞と和訳

Desmond has a barrow in the market place
Molly is the singer in a band
Desmond says to Molly "girl I like your face"
And Molly says this as she takes him by the hand

デズモンドは市場で屋台を出している。
モリーはバンドのシンガー。
デズモンドはモリーに言った ”君のその顔が好きなんだ”
すると、モリーはデズモンドの手を取り ”私もよ”


Obladi oblada life goes on brahhh
Lala how the life goes on
Obladi Oblada life goes on brahhh
Lala how the life goes on

オブラディ・オブラダ、人生は続くよ。
ララ、こうやって続くのさ。
(繰り返し)


Desmond takes a trolley to the jewelry store
Buys a twenty carot golden ring
Takes it back to Molly waiting at the door
And as he gives it to her she begins to sing

デズモンドはトロリーバスに乗って宝石店に行く。
20カラットのダイヤモンド指輪を買って、モリーが待つ場所へ戻る。
モリーに指輪を渡すと、彼女は歌いだした。


In a couple of years they have built a home sweet home,
With a couple of kids running in the yard,
Of Desmond and Molly Jones

数年後、2人は新居を建てた。
2人の子どもが庭で走り回っている。
デズモンドとモリーで、2人はジョーンズ夫妻の子ども。


Happy ever after in the market place
Desmond lets the children lend a hand
Molly stays at home and does his pretty face
And in the evening she's a singer with the band

市場での仕事が終わると、デズモンドは子どもたちに仕事を手伝わせる。
モリーは家で化粧をすると、夜には歌いに出かける。


In a couple of years they have built a home sweet home,
With a couple of kids running in the yard,
Of Desmond and Molly Jones

数年後、2人は新居を建てた。
2人の子どもが庭で走り回っている。
デズモンドとモリーで、2人はジョーンズ夫妻の子ども。


Happy ever after in the market place
Molly lets the children lend a hand
Desmond stays at home and does his pretty face
And in the evening she's a singer with the band

市場での仕事が終わると、モリーは子どもたちに仕事を手伝わせる。
デズモンドは家で化粧をすると、夜には歌いに出かける。
モリーとデズモンドの役割が逆転)



And if you want some fun, take Ob-la-di-bla-da
もし、君が幸せになりたいなら、人生を続ければいいのさ。



ソングライター: John Lennon / Paul McCartney
オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダ 歌詞 © Sony/ATV Music Publishing LLC

(注)訳は信三郎の意訳ですので、正確さに欠ける部分があることはご了承ください。


何回も繰り返して聞いているうちに、この曲の凄いところが見えてきました。
 
一つは「歌詞のうまさ」。

この曲には、印象的なフレーズや心に突き刺さる言葉はありません。
繰り返しますが、日常を歌詞にしているだけです。

しかし、歌詞を聞いていると幸せな一家の様子が目に浮かんできて、ほっこりした気分になるのです。

特に好きなのが、リフレインで出てくる「 life goes on brahhh(人生は続くよ、ブラー)」の部分。

「bra」ですよ。
日本語でいうと、「まあいろいろある」「そんなこんな(あとはめんどくさいから省略)」
というニュアンス。
脱力してるでしょ。

淡々とした言葉だけで人の心を揺り動かす」。
こんな芸当ができるんですね。


もう一つは「シンプルなアレンジ」。

この曲は一見(一聴?)適当にアレンジしているように聴こえます。
楽器構成は、ピアノとベース・ドラム(+α)だけ。
メロディだけでなく、リズムもコード進行もなんの変哲もない。

アレンジがとてもシンプルで、勢いだけで作り上げたようにも聞こえます。

ピンク・フロイドのように、一つ一つのフレーズや歌詞を緻密に練り上げられると、聴き手もつい気合が入ってしまう。
それはそれで聴きごたえはありますが、片手間に聞くという感じにはならない。

実は、そこがこの曲の良い所で、このいい加減さがラックスした雰囲気を作っている。

この「脱力系(?)アレンジ」に「明るい曲調」が相まって、聴く人が幸せな気分になるのだと思います。


そして、この曲で最も好きなところは、最後のワンフレーズ。

  And if you want some fun, take Ob-la-di-bla-da
  もし、君が幸せになりたいなら、人生を続ければいいのさ。

  
これは、「平凡な毎日を続けるだけで幸せになれる。」
という意味だと解釈しました。

それまでの淡々とした歌詞から一転。
最後の最後に「幸せとはなにか」、というメッセージがいきなりやってきます。

このメッセージを理解したときは、本当に凄いなあと思った。

この曲は、NHKの「みんなのうた」で取り上げられたように、子供でも楽しめる曲です。
そうでありながら、実は大人の鑑賞にも耐えうる面も持ち合わせています。

「オブラディ・オブラダ(人生は続く)」というたった一つの言葉から、こんなとてつもない曲を、(おそらく)ささっと作ってしまったポール・マッカトニー。
しかもこの曲が、この人の代表作でないという事実。

才能の凄さには、驚愕しかないです。