こんにちは、信三郎です。
仕事は嫌いだけど、お金は好きです。
定年後に再雇用の人たち50人以上と働いていました。
「人生100年時代」が近づき、定年延長の動きが広がっています。
政府が、70才までの雇用を努力義務とする法案の検討を開始しました。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO44828520V10C19A5MM8000/
この法案が通れば、多くの企業が70才までの雇用を検討するでしょう。
気になるのは、この試案では「①定年延長」または「②定年廃止」が義務付けられていないこと。
多くが、「60才で一旦退職→再雇用」となり、再雇用後は「契約社員」となる可能性大です。
そうなった場合、再雇用で70歳まで働くことは幸せなのでしょうか?
かなり辛い状況になると思います。
よほどのことがない限り、「再雇用」で70歳まで働くことはやめたほうがいいです。
定年後、会社に通い続けることは「針のむしろ」です。
僕の職場にも数十人のシニア社員の方がいましたが、多くの人が契約満了の65才前に、退職していきました。
今回は、「再雇用で働くのはやめたほうがいい」という話です。
じゃあどうするのか、という話も併せて書いています。
今後の会社員生活の参考になれば幸いです。
✽60才以降も待遇が変わらず、昇給・昇進する仕組みが維持される場合はこの限りではありません。念のため。
1.再雇用された人たちの気持ち
再雇用で職場に残るのは、精神的にはとても辛いようです。
再雇用された人たちが数十人いる職場で働いた経験があり、毎日のようにシニア社員(再雇用者員のことを、こう呼んでいました)と話をする機会がありました。
言葉の端々から感じたのは「毎日の辛さ」。
会話から感じた「辛さ」の主な要因を整理すると、以下の3つになります。
・待遇が悪化したうえに、将来にも希望もがもてない
・会社人生は終わったような気分になっている
・年下上司の指示が間抜けに見える
1-1.待遇悪化したうえ、将来にも希望がもてない
定年後に再雇用される場合、多くの会社では契約社員が基本です。
再雇用によって、待遇は悪化し昇給の見込みがなくなります。
これからは、いくら頑張ってもよくなる見込みはない。
そういう状況で前向きな気持になれる人はいるのでしょうか?
僕には無理です。
一時期、同じ部署に再雇用の方が何十人もいました。
全員が、「60才で一旦退職→契約社員として再雇用」という処遇でした。
再雇用されると経歴は一旦リセットされ、契約社員として再スタート。
定年前と比べると、様々な面で働く環境が悪くなります。
・給料が下がったうえに、昇給の見込みがない
・権限と裁量がなくなった
・やりがいのある仕事が回ってこない
契約社員として再雇用されることは、自ら望んだこなので、待遇が悪くなることは知っていたはず。
しかし、実際に働いてみると、その辛さは想像以上のものだったようです。
投げやりになりかける気持ちを押し殺して、なんとか仕事している、という感じです。
人間というのは、希望さえあれば少々のハードワーキングには耐えられるけど、希望がないと簡単なことでもやる気になりません。
希望がない状態で働くことは辛い。
かけがえのない人生を、お金のために浪費することになります。
1-2.会社人生は終わったような気分
サラリーマンの哀しい性というやつですね。
多くのサラリーマンは、入社したときから「60才定年」を脳に刷り込まれてます。
脳内部で「60才=現役引退」と無意識に自動変換してしまうのです。
60才の誕生日を迎え、退職の手続きを諸々行い、「定年のお祝い」なんかやられたら、「俺の会社員人生もう終わりだな」と思ってしまいますよね。
新入社員のようなエネルギーが湧いてこない、という気持ちは分かります。
1-3.年下上司からの指示が間抜けに見える
そして、精神的に一番こたえるのが「 年下から命令される」こと。
直感的には分かりますよね。
昨日まで自分が座っていた席に、若造が座るわけですから。
しかもその若造が座っている理由は、「能力が高いから」ではなく、ただ単に「年齢が若いから」です。
良い気はしないですよね。
経験も能力も不足している(ように見える)若輩者から、指示されて真面目に働く気になるのだろうか?
ときには、自分のアイデアのほうが素晴らしいと思えることはいくらでもあるでしょう。
若手社員が馬鹿な上司から命令されて、やる気を無くすのと同じですね。
2.ベテラン社員の「味」はたくさんある
とまあ、やる気をなくす条件がてんこ盛りの再雇用社員。
真面目に働く気にならないのも分かります。
とは言っても「人生100年時代」を生き抜くには、お金が必要。
辛かろうがなんだろうが、稼がないといけない。
じゃあ、どうすればいいのか?ですが、、、
結論は「ベテランの味」が活かせる仕事を作ることです。
会社から仕事を与えられるのを待つのではなく、自ら仕事を作ることが必要です。
2-1 年齢を重ねたら能力は上がる
経験を積めば積むほど能力は上がっていきます。
不思議なことに、世の中には「若さこそ武器だ」みたいな意見が溢れています。
しかも、多くの人が「年をとるにつれ能力が低下していく」と言っています。
はあ?って感じです。
毎日やっているのに、能力が低下するなんてことがありえるだろうか?
野球の練習を毎日やっていたら、だんだん下手になっていくのか?
そんなことあるわけない!
脳科学的にも、経験論的にも、物事はやるほど習熟していく。
仕事をやればやるほど能力が低下するなんて、何を根拠にしているのだろうか?
そういう事を言っている人の殆どは20、30才台なんですよ。
彼らが言っている「仕事の能力」というのは、「PCをうまく扱える」とか「言われたことをすばやく・正確に行う」とか「大量の事務処理を行う」とかです。
自分たちが経験した範囲内のことを言っているだけです。
仕事とは、それだけじゃないですよね。
「交渉の落とし所を見つけたり」「相手の心理を探ったり」「リカバリー対策をうまくやったり」「リスク要因を予め潰す」etc。
ビジネスに必要な能力は数多くあり、幅広い経験とスキルが求められます。
「指示通りに大量の仕事をこなす能力」は衰えるかもしれませんが、ビジネスパーソンとしての総合的な能力は、日々上がっているはずです。
2-2「ベテランの味」を生かせる仕事を作る
「自分なんて伝票処理していただけだからスキルは何もない」と思うかもしれません。
そんなことはありません。
社会人になって10~20年も働いていれば、誰でも「売り」があります。
長い仕事人生で多くの課題を解決して、知らず知らずのうちに、様々なノウハウを身につけてきたはず。
いわゆる「ベテランの味」というやつです。
多くのシニア社員が持っている「売り」を思いつくままに挙げてみます。
・物事が理屈通りに進まないときの対応策。
・頭の固い上司を落とすにはどうすればいいか。
・職場のキーパーソンは、実はアシスタント社員だと知っている。
・トラブルに遭遇したときの対処の経験が豊富
・・・・・
こういった「ベテランの味」が活かせる仕事を作っていくことが大切です。
3.自分の仕事を作る方法
問題は、多くの会社員が「自分で仕事を作る」という経験がないこと。
「仕事を作るなんてできないよ」と言う人もいますが、そんな事はありません。
時間はかかりますが、「ベテランの味」を活かせる仕事を作ることは可能です。
例えば、「ベテランの味」が活かせる業務として、コンサルタントやアドバイザー的な仕事があります。
・シニア社員が増えて業績が改善した例
僕の事例ですが、再雇用のシニア社員が増えてきたとき、「コンサルティング業務」の仕事を増やして成功したことがありました。
それまでは、若手社員中心の業務の仕事をやっていました。
請負業務で、単価が安く、納期に追われるような仕事ばかりでした。
若手社員が多かったので、体力勝負で無理して仕事をこなすような状態。
それでも業績は黒字ギリギリ。
利益率の良い仕事への転換を検討していたのですが、その方策のひとつが「コンサルティング業務」です。
ただ、いきなり「コンサルティングをします」と言っても、こちら側にそれ相当のノウハウがないと相手にされません。
ここで活きたのが、シニア社員の長年の経験。
彼らの豊富な経験が、コンサルティング業務にハマりました。
経験の引き出しが多く、想定していない事態が対してもすぐに解決策を提示できるのです。
コンサルティングの場にも、何度か同席したことがあります。
そのときのシニア社員の発言には、「なるほど」と思わされることがいくつもありました。
体験に基づいた意見が言えるので、たとえ若手社員と同じことを言っても、圧倒的に「重み」「説得力」が違います。
シニア社員の評判は概ね高く、顧客から感謝されることが多くなりました。
また、シニア社員の方たちのスケジューリングの上手さ・効率の良さも目立ちました。
仕事の優先順位の付け方が適切で、頼むべき仕事と自分でやるべき仕事の峻別も秀逸。
同じ仕事をやっても、若手が夜遅くまで残業しているのに、シニア社員は涼しい顔して定時で帰ることが多かったです。
それを見ていた若手社員の効率が上がる、という思わぬ効果もありました。
コンサルティングに転換したおかげで、単価を高く設定でき、利益率は大幅に改善されました。
ただ、 一つ気をつけなければならないのは、人間性が重要だということ。
多くのシニア社員は人生経験も豊富なので人格的にも素晴らしい人が多いのですが、中には疑問符がつくような人がいたことも事実。
そういう人は、客先でも苦労していました。
人間性がしっかりしていれば、豊富な体験を活かして、顧客に喜ばれる存在になれます。
4.始めるのは、早ければ早いほど良い
どうすれば、自分の持ち味を活かせる仕事を作れるか?
自分にはどのような強みがあり、それを会社の業務の中でどう活かせるか?
戦略的に考えて準備をする必要があります。
例えば、コンサルティング的業務を作るなら、同僚が困っているときに、積極的にアドバイスをしてあげたり、自分のノウハウを言語化しておいたりとか。
自分の強みが周囲に伝わるようなことを、少しずつやっていくことが大切です。
そして、狙っている仕事を担当するチャンスが来たら、迷わず手を上げることです。
「今の仕事との兼ね合いが、、、」とか言って、迷っていてはだめです。
僕は、経理・財務部門にいたのですが、入社以来ずっと事業立ち上げの仕事がやりたいと思っていました。
新規事業の話があるたびに毎回手を挙げていると、いつのまにか事業立ち上げのリーダーに任命されていました。
普段から、地道に種をまいておくことは必要です。
具体的にいつから?と言われると、、、、
感覚的には、40才前後から少しずつ準備を始めたほうがいいかな、と思います。
僕の場合は、リタイヤ用資金を貯めようと決めてから、目標額に達するまでに約12年かかりました。
運が良ければ10年、余裕見ても15年あれば十分です(あくまでも感覚です)
5.まとめ
今回は、何かとバッシングされがちな中高年社員への応援のつもりで、書きました。
残念ですが、基本的には45才過ぎた会社員はリストラ候補生です。
昔からそうだったし、これからも変わらないでしょう。
企業が利益を追求する団体である限り、致し方ないところです。
もちろん、会社を飛び出すという選択肢もあります。
しかし、人によっては、家族や子供、住居など様々な問題を抱え、会社を辞めれないという人もいるでしょう。
そういった場合は、やはり自ら仕事を作ることが必要です。
自ら仕事を作ることで、社内での居場所ができるとともに、定年後にそのまま独立するなど、選択肢を増やすことが可能になります。
上で書いた「コンサルティング」以外にも、いくつかの仕事が考えられます。
・海外関連会社への出向:特に新興国は指導できる人が必要
・業務システムの改善:「IT化は若手・業務内容の洗い出しはベテラン」という棲み分け可能
・・・・・・・・・・・・
会社員という身分になれてしまうと、「自分で仕事を作る」という感覚をなかなか持てません。
ここで、頭を切り替えられるかどうかが、分岐点になります。
自ら仕事を作ることができたら、仕事が急激に面白くなります。
僕の体験ですが、新規事業の立ち上げを行ったときは、生まれ変わったような気分になりました。
それまで、経理でのつまらないルーティンの繰り返しだったのが、まるでウソのような毎日。
もちろん、一言では言えない大変なこともたくさんありましたが、全体的に充実してました。
考えてみれば、人に雇われるという働き方は、産業革命以降に普及したものです。
18世紀以前は多くの人が、農林水産業等で自らの力で稼いでいました。
実は、「誰かに雇われる」という働き方は、特殊な形態なのかもしれません。
「誰かに雇用されてお金をもらえる」という幸せな期間は、せいぜい20年ぐらいと思っておいたほうがいいでしょう。
人生100年時代を迎え、幸か不幸か労働する期間が伸びた現在。
これからは、「自分の力で稼ぐ」という原点に戻っていくのでしょう。