4人家族の「生涯年収とコスト」を試算→サラリーマンが都心に新築マンションを買うのは厳しいという結果に

上がらない給料に増える税金、減らされること確実な年金。
今や、会社員の将来不安は増すばかり。

だけど、ただ漠然と不安に思っていても物事は進まない。
漠然としている不安を少しでも明確に出来ないか。

ということで、サラリーマン家庭の生涯年収とコストをざっくり試算しました。

何を、どう心配すればよいのか?
これからの参考になれば幸いです。

1.前提条件

試算の前提条件は以下の通り

・家族構成:夫婦と子供二人の4人家族
・夫婦共働き(ともに大学卒)。
・60才で定年後、65才まで再雇用で働く。転職しない。
・子供は2人とも大学まで行く。
・マンションに住み、引っ越ししないとする。
・試算の期間は25才から65才の40年。

2.生涯収入の試算:夫婦2人で手取り3億6千万円

(出典:労働政策研究・研修機構の「ユースフル労働統計2017」より)  
こちらユースフル労働統計2017 ―労働統計加工指標集―|労働政策研究・研修機構(JILPT)

大学卒の生涯平均賃金は同一企業で働くとすると「男性:3億8百万円、女性:2億4200万円」となっている。
これは、途中で転職する人より高め。
今の時代、60才までに転職するひとは5人に4人いるそうですから、転職する人のほうが少数ですが、とりあえずこの金額を採用。

夫婦2人だと5億5000万。

この金額は額面。税引前です。
ここから、税金・社会保険料が35%引かれると仮定する。
共働き夫婦2人の生涯手取り収入は「3億6000万円」になります。

前提条件を見ても分かるように、これはかなり高めに見ています。
”夫婦共働きの正社員でともに大学卒。同一企業に定年まで勤める” というのを想定しています。

そもそも、夫婦2人とも大卒・正社員というはかなり恵まれているでしょう。
「育休」取ればその期間は給与が下がるし、転職すると収入は減ることが多い。
また、会社規模別の給与を見ると、上記の金額を超えるのは「従業員1000人以上」の大企業だけ。1000人以下の企業になると、さらに収入は下がります。

今の時代、職業人生は多様化しているので、昔のように典型的なパターンというのはなくなってます。
試算のために、やや強引に前提条件を設定しました。

このように、収入は若干甘めに見ています。

3.コスト計算 総コストは3億〜3億7000万

(1)住宅費用:8000万~1億3500万(住む地域による)

住宅は、住む地域によってコストが大きく違ってくる。
東京(品川区)・大阪(北区)・名古屋の3地区の平均的な70㎥のマンションをローンで取得すると仮定して、地区別に試算。
銀行への支払いは利息含め、物件価格の1.5倍とする。

東京都心:8000万円*1.5=1億2千万円
大阪  :5000万円*1.5=7500万円
名古屋 :4300万円*1.5=6500万円

これに、固定資産税と管理費・修繕積立金が加わる。
管理費・修繕積立金:2万/月とすると、2万円*12か月*40年=960万円
固定資産税:年間15万円とすると、15万円*40年=600万円
合わせて約1500万円

住宅費用の合計は
 東京都心:1億3500万円
 大阪  :9000万円
 名古屋 :8000万円

ここで注意が必要なのは、実は住宅を買う年代は、30代~40代前半だということ。
それまでの期間は賃貸に住むことになりますが、その家賃はここに含まれていない。
10年間賃貸に住むとすれば、「100万*10年=1000万円」が加算される。

(2)子育て費用(養育費+教育費):子供2人で7000万

(出典:ベネッセ教育情報サイト)【保存版】子育てにかかる費用のすべてを解説します|ベネッセ教育情報サイト

・上記調査によると、養育費は「一人あたり1,640万円」
・教育費は、公立と私立で異なる。
幼稚園~大学まで、一番安い全て公立だと約1000万円。
高校・大学私立だと1400万円弱。全て私立だと2500万円以上と差が大きい。

すなわち子育て費用(養育費+教育費)は子供2人が大学まで行くとすると
 最低:2,640*2人=5,280万円
 最高:4,160*2人=8,320万円

2500万~3000万円程度の差がつく。ここはあいだをとって、2人で7000万と仮定。

(3)保険(生命保険+個人年金):1500万

(出典:生命保険文化センターの生活保障に関する調査)平成30年度 生命保険に関する全国実態調査(速報版)」まとまる|公益財団法人 生命保険文化センター

世帯あたりの年間払込保険料(生命保険と個人年金保険)は38.2万円/年。
これを40年継続するとする。
38万*40年=1,520万円・・・1500万円とします

(4)車に関わる費用:3000万

これは前提条件等によって、2500万~4000万円までいろいろなデータがあります。

ここでは中間をとって、3000万円

(5)40年間の生活費:1億2000万

(出典:生命保険文化センター総務省「家計調査年報」)月々の生活費は平均していくらくらい?|公益財団法人 生命保険文化センター

「住居費」「教育費」「保険医療」を除くと、生活費の全国平均は260千円/月。
26万*12ヶ月*40年=12,480万円   1億2000万円とします。

(5)コストの合計
(1)~(5)をすべて足すと「四人家族の生涯コスト」は・・・・

東京:3億7000万円
大阪:3億2500万円
名古屋:3億1500万円

4.生涯収支:東京はマイナス。大阪・名古屋はプラス。

収入とコストから収支を計算すると・・・

東京:3億6000万-3億7000万=-1500万
大阪:3億6000万-3億2500万=+3500万
名古屋:3億6000万-3億1500万=+4500万

という結果になりました。

なんと、東京の都心に新築マンションを買うと、そこそこ収入がある共働き家庭でも、生涯収支はマイナスという結果!

しかも、上記コスト計算には、マンション取得前の家賃・塾の費用・家族での旅行費用等を含んでいません。
これに、子供を中学から私立に通わせたり、育休・転職したりすると、下手すると自己破産、ということにもなりかねません。

5.まとめ:サラリーマンが東京都心にマンション買うのは無理ゲー

衝撃的な結果になりました。

大阪・名古屋はともかく、「東京のサラリーマンは、都心で新築マンションを買うのは止めておいたほうがいい。」というのが、今回の結論です。

21世紀に入ってから給料は年々下がり続けているので、この収入を確保するのは、今後ますます難しくなるでしょう。
中学受験、家族の海外旅行と、実際の生活費がこの試算を上回る要素は数多くあります。

実際は各家庭の事情は異なりますが、平均すると厳しいことは明らか。

リストラ、転職、介護。何かあるとたちまちピンチに陥いる可能性は大。
少子化が進むのもわかるなあ。

希望を見いだせるのは、主なコストは「住宅費用」と「生活費」であること。
この2つは「子育て費用」より高い。

この2つを削減することが、生涯家計健全化のポイント。
住む場所は選べるし、日々の家計は工夫できる。
改善の余地はありそう。

しかし、湾岸のタワーマンションが続々売れている現状を見ると、近々バブル発生の予感もするんだよなあ。