【スタジアム観戦記:海外編】ロンドンオリンピックスタジアム:スタジアムにいるだけで楽しい「英国流スポーツ観戦」

2017年8月にロンドンで開催された世界陸上を観てきました。

そこには、日本(の野球、サッカー、ラグビー、バスケット)とは、少し異なるスポーツ観戦の楽しみがありました。

特に、違いを感じたことが2つありました。

 ・顧客視点のスタジアムの造り
 ・自らも積極的に楽しむ観客


世界陸上」というたった一つのサンプルですが、そこで感じた事を書きます。

1.ロンドンオリンピックスタジアム

2012年のロンドン五輪用に建設された競技場で、収容人員は8万人。
五輪後は、サッカープレミアリーグのウエストハムがホームスタジアムとして使用中。

競技場周辺は、クイーンエリザベス公園として整備され、競泳センターや競輪場が併設されているほか、公園内では人工の川が流れボート遊びが出来るなど、市民の憩いの場にもなってます。


元々は汚く廃墟のような地区だったのが、五輪の再開発によってショッピングセンターや研究施設・マンション等が立ち並び、街は活気を見せてます。

東京五輪では「レガシー」という事が言われますが、ここロンドンでは、五輪後の施設活用と地域活性化を上手く進めているように見えます。

2.顧客視点のスタジアム造り

日本との違いを感じた事の一つが、スタジアムの設計

顧客視点に立った作りが随所に見られて、心地よく過ごせます。

(1)大人が寛げる飲食コーナー

競技場内に、スポーツバーのような飲食コーナーがあります

テーブルと椅子が置いてあって、アルコールや軽食を楽しむことが出来ます。
ビールを飲みながら談笑している人が何人もいました。

日本のスタジアムでは、売店が狭いコンコースに押し込められるようにして並んでいる事が多いかと思います。
スペースが狭いため混雑していて、ハーフタイムなどは長蛇の列になるのが普通。

とてものんびり過ごすような場所ではありません。

ここのバーコーナーはスペースを広くとってあって、観戦に疲れた大人もゆったりと寛げます。

(2) 余裕あるシートと適度な傾斜

2つめは座席が大きい。こと。

多くの日本のスタジアムは、座席が小さいため、両隣の人と体を密着させなきゃいけない。
無理な体勢を維持しなきゃいけないので、座っているだけで疲れてしまうんですよね。

ロンドンスタジアムのシートは英国人仕様なのか、横・縦とも余裕十分。
座っている時でもゆったり出来ます。
日本の野球場のシートの狭さに閉口した身からすると、この余裕はうらやましい限り。

また、どういう造りになっていたのかちょっと思い出せないのですが、緩やかな傾斜にもかかわらず、前席の人の頭が邪魔にならない。
楽に、競技場全体を見渡せます。


隣や前の人を気にすることなく観戦出来るのはうれしい


日本では自治体主体でスタジアムを建築することが多いため、どうしても競技者優先の仕様になってしまいます。
税金を使う公共施設であるからには、致し方ないところでもあります。

しかし、機能優先で遊びの要素が少ない施設では、観戦者が不便を感じるところが多くあります。

巨額のコストが掛かるので、自治体主体の建設になる事が多いスタジアム。
そこにどうやって観客サービスの視点を入れられるか。

プロスポーツの興行という面からみると、日本のスタジアムはまだ改善の余地があるようです。

3.観客と選手が一体化したかのような盛上がり

会場の雰囲気も、日本とはひと味違ってました。

どう違うか。


ひとつは、勝敗と同時に、素晴らしいパフォーマンスも楽しんでいるように見えることです。

たとえて言うなら日本の運動会」のような雰囲気
日本の運動会では、我が子を応援するのと同時に、ものすごく脚が早い子に驚いたり、運動不足のお父さんのドタバタに笑いが起きる。

そのような感じで、自国選手への応援と同じくらい、優勝したり好記録を出した選手へも大きな声援が送られます。

陸上競技に対する知識も、半端じゃない。

特に印象的だったのが、男子円盤投げ。

どの国の選手が投げても、60メートルを超えれば拍手が湧き、届かないとため息が漏れる。
60メートルとを超えれば好記録だということを、多くの観客は知っているようです。

円盤投げの記録が何メートルかなんて知っている日本人なんて、ほとんどいないはず。

僕も当然、知りません。(因みに、今年の日本選手権の男子円盤投げの優勝記録は62メートル16センチです)。

英国人の陸上競技の知識の深さには驚かされました。


応援の熱狂度も凄かった。
観客が、あたかも自分が競技に参加しているようなリアクションをします。

棒高跳びの試技に失敗すれば頭を抱え、1500メートル走の着順で予選を通過すれば両手を挙げて喜ぶ。

大道芸人の芸に対して、観客が積極的に反応する風景は、欧米ではよく見られますが、同じ雰囲気が世界陸上の会場にも溢れています。

声援の迫力も凄かった。

男子1万メートルでは、周回する選手が目の前に来るたびに、選手の名前を叫ぶので、声援が競技上をぐるぐる回っていきます。
そして、ラスト2周ぐらいになると、観客が総立ちで叫び、ユニオンジャックを狂ったように振り回す。
その音量の大きさは人生初。
Jリーグやプロ野球はもとより、ロックコンサートでも経験したことがない大音量。
帰ってから、何日も耳がキンキンしたのは何十年かぶりです。

競技者と一体となってスタジアムを盛り上げていく観客。
その中にいると、スタジアムにいるだけで楽しくなります。

4.まとめ

顧客視点に立ったスタジアムの造り。
積極的に楽しむ観戦スタイル。

加えて、英国における陸上競技というスポーツの浸透度。


それらが合わさることで、スタジアム全体がお祭りのような雰囲気になっていました。

英国の人々は、試合の勝ち負けだけでなく、スタジアムに来ること自体をも楽しんでいるよう。

これが、日本と英国のおおきな違いです。

僕は、プロ野球Jリーグを見るとき、勝敗がほぼ決すると早々に席を立ってました。

それは、どちらが勝つか、ということが試合観戦の興味のほとんどを占めていたから。
勝敗が決まったのに、スタジアムに居たいと思う事はあまりありませんでした。


スタジアムに来ることが楽しい

これまではお題目としてしか知らなかったことを、実際に体験したのは、新たな経験でした。


また、観客の中に家族連れが多く見られたのも、意外な点です。

その風景は、日本のプロ野球やJリーグでの親子連れの姿とも重なります。
英国では、陸上競技観戦も一つのレジャーとして定着している事を感じました。


スポーツの楽しみ方や応援のスタンスに、日本との違いを感じたロンドン世界陸上

今度は、サッカーやラグビーのような球技スポーツがどのような雰囲気なのか。
見てみたい気がします。