「共働き」をいくらしても、世帯収入はあまり増えないという事実

共働きの家庭が増えているそうです。

多くの場合、仕事はつまらないはず。
なぜ、好きでもない仕事をわざわざやる人が増えたのかというと、理由の1つが「収入を増やすため」。
簡単に言うと、お金のためですね。

ところが厚生労働省の調査によると、「共働き家族は増えたが世帯収入はほとんど増えていない」らしいのです。

せっかく頑張って嫌な仕事をしたのに、一家の収入が増えないのは悲しいもの。

共働きしてもなぜ世帯収入が増えないのか?。考えてみました。

1. 世帯所得の頭打ちと共働き家庭の増加

まずは、世帯収入の推移から。
少し古いですが、厚生労働省の「平成28年国民生活基礎調査」に世帯収入の推移が載っています。
(出典:ガベージニュース)

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(注)児童あり世帯:18歳未満の未婚の人がいる世帯
   高齢者世帯:65歳以上の人のみ、あるいはそれに18歳未満の未婚の人が加わったもの
 
このグラフで注目するのは「児童あり世帯」。
(注)の定義から見て、就業者がいる世帯はほぼ「児童あり世帯」に含まれていると思われます(子供がいない世帯は除く)。

この世帯の収入が、1996年の782万円をピークに漸減しています。2012年以降は少しずつ上昇していますが、2016年でも740万円なので、今だに20年前(1996年)の水準には達していません。

一方、共働き家庭の数は順調に増加しています。(出典:厚生労働省 平姓28年国民生活基礎調査

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共働き世帯は増加傾向

(注)青線:専業主婦世帯の数
赤線:共働き世帯の数

赤色の共働き世帯の数は一貫して増えていて、2000年をすぎると共働き世帯の数は専業主婦世帯の数を上回り、その差は開くばかりです。

2. 疑問;なぜ「共働き家庭」が増えても世帯所得は増えないのか?

ここで疑問が出てきます。
「共働き世帯は増えているのに、なぜ世帯所得は増えていないか?」です

普通は、働き手が増えると世帯収入は増えるはず。
共働き世帯が増えるなら、世帯所得はそれに伴って増えてもいい。

しかし現実は、世帯収入は増えるどころか、逆に減少しているのです(ここ2、3年は増加傾向に転じたとはいえ)。

それはなぜなのか?

無い脳みそを絞って目を付けたのが、GDPと雇用者数の関係です。
GDPが増えずに雇用者ばかり増えたら、給料(収入)は減ってしまうでのでは、と考えました。

まず、ここ30年のGDP推移を見てみます。

1992年以降、日本の一人あたりGDPは増えていません。

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一人あたりGDPは1995年をピークに横這い
(出典;世界経済のネタ帳)
日本の一人当たりの名目GDPの推移(1980~2018年) - 世界経済のネタ帳

ここ2,3年で若干増加していますが、1992年ごろのピークにはまだ届いてません。

次に雇用者数の推移です。
この期間の雇用者数は、共働き家庭が増えたにもかかわらず、増加していません。

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雇用者数は横這い

就業者数の合計は、6500万人弱で推移しています。
問題なのは、正規雇用者がじわじわ減って、給料の比較的低い非正規雇用者が増えていること。
要するに、正規雇用者が非正規雇用者に入れ替わっているのです。

要するに、GDPも雇用者数も横這い。
しかし、給料が少ない非正規雇用者の数が増えている。

女性の社会進出(これは自らの意思で選択したことなら良いことと思います)促進によって、共働きが増えた。
それが、高齢化の進む社会で雇用者の減少を食い止めているよう。

一方、企業側の思惑としては、どうせ雇うなら給料は安いほうがいい。
業績拡大は出来ないけど、とりあえず安い働き手を確保したい。そこで、退職した給与の高い高齢者の代わりに、安い非正規労働者を雇った。

この2つを見ると、「女性の社会進出→共働きの増加→雇用者数減らない→企業の利益増えない→給料の減少→共働きしても世帯収入が増えない」という状況が生まれているようです。

経営側のニーズと政府の「女性の活躍」という心地よいフレーズに、働く人達がで上手く利用されちゃった、という感じがしないでもありません。

3. 経済が成長しなければ、いくら働いても収入は増えない

経済が成長していないのに働く人が減らなければ、給与は下がるか、あるいは横ばいになってしまうのは、考えてみれば当たり前です。
GDPが増えなければ、給与へ回せる源泉には限界があります。
そうすると、働き手が増えること(減らないこと)が逆に、一人あたりの給料を減らしてしまうことにもなる。

個々の家庭から見ると、共働きが収入を増やす手段になりますが、全体で見るとそれが回り回って世帯収入を減らす要因になる。
よく言われる「合成の誤謬」が起きているようです。
個々の家庭では働き手を増やすことで収入増を目論んだのに、長い目で見るとそれがかえって家庭の収入の伸びを抑えるという皮肉な結果。

いくら働き手が増えても、経済が成長しなければ、雇用者へ回ってくるお金は増えない。
江戸時代に家族総出でいくら働いても、農家の暮らしが一向に良くならない状況に似ていますね。

4. まとめ

これまでのことを、自分なりにまとめると以下のようになります。

・今の日本では、共働きしても世帯所得はあまり増えない。
・それは、経済成長していないから。経済が成長しないと給与総額が変わらないため、そういうときに働くひとが増えると、逆に給料は減ってしまう。
・収入面から見ると「共働き」は個々の家庭にとっては良い選択だが、みんながそれをやりだすと、全体としては一人あたりの所得は減る方向に向かう。

希望もあります。17年から世帯収入のグラフが上向きになっていること。
人手不足が逼迫してきて、給料が上昇し始めたのではないでしょうか?

この流れがぜひ続いてほしいところ。
しかし、せっかくの上昇機運が、外国人労働者の受け入れで止まる恐れもあります。(→企業の狙いはそれなんだろうが、、、、)

まあ、なかなか物事はうまくいきませんね。

労働者にとって受難の時代が続くのは間違いないようです。