【スタジアム観戦記】秩父宮ラグビー場No.1:サンウルブズってなんでスーパーリーグに参加しているの?

暇なときは、よくTVでスポーツ中継を見ます。

好きなのはサッカー・バスケット・陸上・アイスホッケー等々。そう言えば、先日の世界卓球の女子団体決勝は面白かったですね。 

 

そんなわけで、休日の昼間はリモコン片手にTVに張り付いてばかり。

ついにある日、嫁さんの堪忍袋の緒がついに切れて、「昼間から部屋でごろごろするな!」という厳しいお言葉を頂くことに。

 

そこでたまには生で試合を見ようと、はるばる電車で神宮外苑秩父宮ラグビー場に行ってきました。対戦カードは、ラグビースーパーリーグサンウルブズVSレッズ。

 

スーパーリーグ」とかいう聞き慣れない言葉を聞くと、スポーツオタクの血が騒ぎます。今回は観戦記ではなく、スーパーリーグサンウルブズの関係について書いていきます。

 

1.スーパーリーグとは

スーパーリーグとは、ニュージーランド・オーストラリア・南アフリカの三カ国のプロラグビーチームによる15人制ラグビーのリーグ戦のこと。

レギュレーションが毎年のように変わっているようですが、2018年は15チームが参加。

 

南半球のリーグ戦なのになぜか、日本のチームが参加しています。これが我らが「サンウルブズ」です。

 

上記3か国とは実力的に大きく差を開けられている日本ラグビー

単独チームでは興行的にも成り立たないということ(だろうと思います)で、国内各チームから選手を選抜して、ほぼ日本代表のようなチームを作って参加しています。

 

面白いのは、「サンウルブズ」が日本代表とはイコールではないこと。

国内リーグに属している選手が選手選考の対象となっているので、外国籍選手も含まれます。今や、トップリーグ(国内のリーグ戦のこと)のほとんどのポジションに外国籍選手がいる時代ですから、もしかしたらサンウルブスは日本代表より強いかも。

 

2.なぜ、日本のチームが南半球のリーグ戦に参加しているのか?

なぜ、南半球のリーグ戦に日本のチームが、しかも単独ではなく選抜チームが参加しているのか。

 

日本ラグビー協会のHPによると「2019ワールドカップの日本代表強化のため」となっています。契約上も、とりあえずは日本チームの参加は2020年までとなっているようです。(延長の可能性もあり)

 

確かに、ほぼ日本代表みたいなチームが毎週のように強豪チームと試合をすれば強くなりそう。

 

しかし、南半球の三カ国が日本代表の強化に協力する義理は無いはず。

強くなりたいなら自分の力で努力するのが筋というもの。

 

また、日本のチームが参加すると、リーグ戦のチーム枠が一つ減ることになります。サンウルブスの参戦によって、リーグ戦から押し出されるチームと揉めることは火を見るより明らか。

そんなことまでして、どうして日本のチームを受入れたのか?(今年からアルゼンチンのチームも参加している)

 

答えは、スーパーリーグの市場拡大

 

そもそも、南半球三カ国だけでは市場規模に限りがある。

3カ国の人口を見ると、南ア5,600万人、豪2,400万人、ニュージーランド470万人と、合計でも8,500万人程度。

市場規模が小さい南半球のリーグだと、スポンサーになる大企業も限られる。なんせ、世界的大企業のほとんどは北半球にあるのですから。

 

市場が小さいのが原因なのか、スーパーリーグの選手の報酬は、英・仏のプロラグビーリーグと比較すると低くなっています。そのため、多くのトッププレーヤーは英・仏のプロリーグでのプレーを希望しています。

選手流出を防ぐ様々な制約があって、必ずしも全てのトップ選手が英・仏でプレーしている訳ではありませんが。

(例えば、ニュージーランドには「ニュージーランド代表(オールブラックス)になるにはスーパーリーグに参加しなければならない」という規則がある)

  

そこで目をつけられたのが、GDP世界3位の経済大国で一億の人口を有する日本。

日本のラグビー人気は低迷気味とは言え、スーパーリーグ側から見れば1億人という人口と魅力あるはず。単純計算で市場規模が一気に倍に膨れ上がるわけです。

 

ニュージーランド・豪と日本の間では時差が少ないことも魅力の一つ。

この3か国間なら、試合のライブ中継が可能です。

 

一方、世界に目を向けると、ラグビーの普及拡大が国際ラグビー連盟の重要なテーマになっていて、その中でも特に日本市場への期待が大きい。 

 

ラグビーという競技は英連邦の国々や仏では人気スポーツですが、そのほかの国での人気は今ひとつ。

国際ラグビー連盟は人気獲得のための普及活動に力を入れており、7人制ラグビーの五輪参加、女子ラグビー大会の設立、ティア2(強豪国の次のレベル。ざっくり日本、フィジーなどの世界ランク10~30位程度の国々)同士の国際大会開催等、様々な施策を行なっているところ。

 

伝統国とそれ以外の国々との間に実力差があるのも問題。

イタリア・アルゼンチンを除けば、昔ながらの伝統国(英4地域、仏、豪、南ア、ニュージーランド)に対して、他の国々は刃が立たない状況が長年続いています。ワールドカップのベスト8は、毎回代わり映えのしない顔ぶれになっています。

 

「裾野拡大」と「競技レベルの均等化」。

国際ラグビー連盟が推進する2つの施策ですが、一朝一夕には効果が出ないことも事実。地道で、息の長い取り組みが必要です。 

 

そんな中、経済力・人口やラグビーの人気度を考慮すると、今のところ日本とアメリカが2大有望国となっています。

 

3.2大有望市場:日本とアメリカの比較

今後の2大有望市場である日本とアメリカですが、裾野拡大の進捗度合いは見事なまでに明暗が分かれています。

 

まずアメリカですが、ここ10年ほどでラグビーの競技人口は8割増加。競技人口は約150万人と、イングランドに次いで世界第2位。3位のオーストラリアでさえ約70万人ですから、競技人口だけで言えば立派なラグビー大国。

16年からはプロリーグが始まるなど、ラグビー熱も少しずつ高まってきている様子。

マルチスポーツ制が徹底されているアメリカですから、今後はアメフト・バスケット等から身体能力の高い選手の流入も予想され、裾野拡大に伴って競技レベル向上も期待大。

 

それに対して日本。

少子化の影響以上に競技人口の減少が進んでいます。

参考までに高体連の登録者数を見ると、ラグビーは08年27千人→17年22千人と10年で82%。花園予選参加校も(時期は異なりますが)、91年1490校→14年786チームとほぼ半減。このままだと、都道府県予選が実質上機能しなくなる所も出てきそう。

競技人口が減少すると、強化にも早晩影響が出てくるのは避けられない。

 

同じ有望市場でありながら、人気上昇中のアメリカに対して、競技人口・人気ともに停滞どころか下降気味の日本。

 

国際ラグビー連盟が、日本への支援に特に力を入れる気持ちも分かります。 

 

4.サンウルブスがスーパーリーグに参加する意義

このような状況で2019年ワールドカップの日本開催が決定。

 

観客動員・スポンサー獲得に不安を残しながらも、ラグビー強豪国以外で初めての開催が実現した背景には、前述の通り日本のラグビー人気復活への期待があリます。 

 

スーパーリーグへの日本チーム参加と2019年ワールドカップ日本大会の成功。

この2つがセットになり、更に2020年以降のラグビー人気継続へとつなげていく。これが、世界のラグビー市場のパイ拡大に繋がることが期待されているのでしょう。

 

こう見てみると、日本チーム(サンウルブズ)のスーパーリーグ参加は、日本だけでなく、世界のラグビー界の発展にとっても重要な役目を負っている事が分かります。 

2019年ワールドカップ日本開催まで約1年。ここが、日本ラグビー界にとって大きな分かれ目となることは間違いないでしょう。