「ボヘミアンラプソディ」を観てきました。
久し振りに映画で泣きました。いろんな泣き方をしました。
バンドがどんどん成長しているときのうれし涙。
フレディが悩む時の悲しい涙。
評論家に酷評されながら、ライブは成功しているときのうれしい涙。
苦難を乗り越えた後のライブエイドの場面でのさわやかな涙。
映画では本物かと思うくらい、クイーンのメンバーたちの外見・仕草が忠実に再現されていました。
そのレベルがあまりにも高いため、つい感情移入してしまい、涙腺が緩みっぱなしでした。
1.クイーンとの出会い
クイーンは、人生で初めて好きになったバンドです。
グループの存在を知ったのは、洋楽など聴いたこともなかった中学1年の時。
深夜ラジオでDJが、「クイーンのできたてほやほやの新曲をお届けします」と言って流れてきたのが「ボヘミアンラプソディ」。
衝撃でした。海外には何て凄い曲があるんだと思いました。
日本の歌謡曲しか聴いたことがなかった僕は、頭をぶち割られたようでした。
感受性の強い年代だっただけに、その日以来、聞く音楽は洋楽ばかりになっていまいました。
翌年の来日公演にも行き、生まれて初めてのライブ体験をしたのでした。
2.映画前半:鼻持ちならない嫌な奴
この映画は、そんなクイーンのボーカル、フレディ・マーキュリーを中心とした物語。
東アフリカのザンジバル生まれという生い立ちとコンプレックス、父親との葛藤、バイセクシャルであることの悩み。
彼が人生をかけて、そういった負い目を乗り越えていく姿を描いています。
そういったコンプレックスの裏返しなのか、飛び抜けた才能を持った彼の、傲慢な性格も浮き彫りにします。
傲慢でワガママで自信満々で、言いたいことをズケズケと言う。
一言で言うと、鼻持ちならない奴。
オブラートに表現されているけど、そういう場面が至るところで出てきます。
一番印象的なのが、彼がソロアルバムを作る事になったとき。
「俺が居なけりゃ、おまえ達は何者でもない」というニュアンスのことを、メンバー一人一人に言い放つ。
確かに才能はずば抜けてたのだろうけど、これを言ったらお終い、というやつです。
ここまであからさまに言われたら、メンバーもやる気なくすわ。
この頃は80年代前半。クイーンの人気に陰りが出ていた時期です。
ライブバンドとしての評価は高まっているにもかかわらず、出すアルバムがいずれもセールス的に低迷。
加えて、フレディの独特な感性の衣装が悪評で、メンバー間もギクシャクしていて、解散説が噂されていました。
3.映画後半:低迷から復活
フレディは自分が選んだ最高のミュージシャンを集めて、思い通りのアルバムを作ろうとする。しかし、結果は不発。
ここで、フレディは過去の振る舞いをメンバーに謝罪することになる。
このときのセリフは泣かせます。
せっかく、最高のミュージシャンをそろえたけど、良い音楽が作れなかった。
「俺の意見に反対する奴がいなかった。不満顔を見せる奴もいない。リテイクを要求するやつもいなかった」
どんな優秀なミュージシャンを使っても、4人で作るときのような化学反応は起こせなかった。
そのことに、フレディが気づいたことで、クイーンが復活の道を歩み始めます。
バンドの素晴らしさがにじみ出てくるシーンでした。
そして、この映画の最大の見どころが、85年のライブエイドのシーン。
この時の実際のクイーンのパフォーマンスは凄かった。圧巻でした。
ライブエイド出演者の中で「№1のパフォーマンス」という評価を得て、クイーン復活のきっかけとなったライブでした。
映画では実際のライブ映像かと思うくらい、フレディの仕草・雰囲気から観客の熱狂の様子まで、忠実に再現しています。
ライブシーンの間中、涙が止まらなくなってしまいました。このときほど隣に人がいなくて良かった、と思った事はないです。
4.まとめ
冷静に見ると、フレディはとても悪趣味だと思う。
少女漫画のようなフリルの付いた衣装を着たり、ぴちぴちの白いワンピースを着たり、センスの悪い女装をしたり。
その趣味の悪さは、今のスマートで格好いいミュージシャン・タレントとは、明らかに一線を画している。
他人は、そういう人を茶化したり、馬鹿にしたりすることが好きだ。
オタクだ、きもい、だと他人は無責任に言いたがる。
でも、どんなにダサい格好をしてても、彼がステージに立てば観客は熱狂する。
良い音楽さえあれば、ダサくても悪趣味でも関係ない。
時代に合った、スマートでおしゃれな人間がもてはやされがちだけど、実は、本当に人の心を動かすのはそんなことではないのだろう。
もしかしたらフレディ・マーキュリーは、意図して悪趣味な格好をしていたのではないか。
悪趣味だろうが何だろうが、自分のやりたいことをやれ。
これこそが、生涯を掛けてフレディが言いたかったメッセージではないか。
映画を見終わったときに、ふと思ったのでした。