【映画】12小節の人生(エリック・クラプトン):同じ未熟な人間として共感できるクラプトンの生涯

身につまされて、ちょっぴり暗い気分にもなる。
そんな映画です。

ロック界最高のギタリストの一人、エリック・クラプトン
精神的な未熟さゆえに自滅し、家族を支えにして復活する生涯を描いています。


幼少期に実の母親に関係を拒絶されたトラウマからか、他人と健全な関係を築けなくなるクラプトン。
親友ジョージ・ハリスンの妻パティを略奪愛した後も、数々の女性と関係を持ち、妊娠までさせてしまう。

70年に傑作アルバム「レイラ」を出したあと、ヘロイン中毒・アルコール依存症に陥り、レコーディングでもライブでも醜態を晒し続ける。

低迷していた彼がやっと復活を遂げるのが、91年のアルバム「アンプラグド」。


ギタリストとして、常に華やかなスポットライトを浴びていたように見える彼のキャリアですが、、映画を見ると70年・80年代の約20年間は、まともに音楽活動をしていないことがわかります。
年齢でいうと25才から45才。
ミュージシャンとして一番輝いているこの時期を、ヘロインとアルコールに溺れて貴重な才能を費やしてしまう。
かろうじて音楽活動は続けていたものの、一歩間違えばそのまま生涯を終える可能性もありました。

目的のない日々を送っていた彼が目覚めたのは、91年に息子コナーを事故で亡くしてから。
息子を失った悲しみと家族を背負うという自覚を持てたことで、再び真剣に音楽と向き合うようになります。


それにしても当時のファンは、辛抱強くミュージシャンを見守っていたものだと思う。

映画の中で、アルコール依存症のときのライブで、観客から野次が飛び、ステージに物が投げ込まれる場面があります。
この時、まともに演奏できない状態だったようです。

たとえファンであっても、ダメなら批判し、良ければ称賛する。
良い意味の緊張関係が、当時のミュージシャンと観客の間にはあった。

今の時代、コンサートでは最初から観客が総立ちになり、レビュー評は称賛ばかり。
このような今の音楽業界とは、全く違う世界が70年代にはあった。

ファンは、批判もするが、ミュージシャンの成長を見守ってもくれる。
音楽界がマーケティングにそこまで支配されず、ミュージジャンとファンが共に成長していく、幸せな時代だったのかもしれない。


時代に恵まれたのか。
それとも、本当の天才だったのか。

観る人を選びますが、一人の心の弱い人間の物語として共感を覚える作品です。