【おすすめ本】カルテル/ドン・ウインズロウ:メキシコ麻薬戦争の内幕を描くミステリー。著者の熱意に引き込まれる。

ものすごいリアリティとエネルギーで読者に迫ってくる。読み始めたら最後、著者の力に引きつけられて、最後まで読み通せずにはいられない。

メキシコの麻薬戦争の残酷な現実を次々に読者の前に差し出してきます。普段、日本に暮らしていると目にすることのない世界があることに衝撃をうけます。
市長や検事が平気で暗殺される国の内情がどういうものなのか。読者はこの小説を読むことで、その凄まじさの一端を知ることになります。

序文では4ページに渡ってメキシコで殺され、消えていったジャーナリストの名前を淡々と表示する。そのリストの長さに深い衝撃を受ける。

本文ではさらに、麻薬戦争の恐ろしさを次々と描いていく。最初は一つの村が、次に地域、最後には国までもが麻薬組織に支配されていく。麻薬組織が、一般市民、ジャーナリスト、警察官、政治家たちに、どのように近づき、恐怖を植え付け、支配していくのか。それに抗う一市民の勇気や行動がいかに無力か。暴力に支配された世界の現実を思い知らされる。その描写に、ニュースより遙かな実感を伴って読む者の心に迫ってくる。

世界はここまで破壊されていくのか。

本書の全編である「犬の力」とセットで読むと、その面白さも倍増します。

とにかく衝撃を受けます。全編にわたって、作者の熱意が伝わってきます。
ノンフィクションを超えた最高の小説の一つと言って良いと思う。